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四役アピール:国立大学の大学の自治と学問の自由を侵害する国立大学法人法改正に反対する

2023年11月27日 教職員組合四役はアピールを出しました

 

2023117日、「国立大学法人法の一部を改正する法律案」が衆議院で審議入りし、20日本会議を通過した。12月初めには参議院で可決するとみられる。世論への周知も十分でないまま、なぜこれほど急いで法案を通そうとするのか問題を指摘せざるを得ない。

この法律案が施行されると、対象となる国立大学の大学の自治、そして大学の自治と不可分の学問の自由が大きく損なわれることが危惧される。特に、新設の運営方針会議は、現在大学のガバナンスを担っている評議会等の組織の上位に設置されるものであり、屋上屋を重ねるがごとき組織改正となっている。屋上屋を重ねたがごとき会議であっても、上位機関に位置する以上極めて重大な権限を有することになる。しかも、その会議の運営委員は文部科学大臣の承認を得たうえで任命される外部委員を中心に組織されている。この結果、文部科学省の管理は強化され、大学における研究教育の自主性、自律性が損なわれることが危惧される。文科省は、学内から申請された人を任命するので政府が意図的に国立大学の運営に介入することはないとしているが、承認しないという可能性をもたせることにより、政府の意図する外部委員を選択しなければならないという圧力となり得る。このことは、日本学術会議の任命拒否問題を見ても明らかであろう。

 委員を文部科学大臣が承認する際、政府の意に沿わない言動や思想信条を理由に拒否しないよう留意するなど、13項目の付帯決議が盛り込まれ、想定される運営会議のメンバーのうち学外者を3人以上とした。さらに、学長選考には「意見を述べることができる」にとどめ、合議体の関与は当初案からは弱まっていた。しかしながら、こうした重大な法案が十分な審議がなされないまま、衆議院を通過したことは極めて遺憾と言わざるを得ない。参議院での廃案に向けてさらに議論が進められるべきである。

 今年は、国立大学法人法が施行されて、20年となる。この間、国立大学の財政は圧迫され、その結果、教育研究の力が弱体化した。今後軍事費の増額に伴って文教予算の削減が進み一層窮地に追い込まれることが予想される。そうした中で、大学の自主性、自律性を無視して外部委員が「稼げる大学」を目指すようなことになれば、「深く真理を探究して新たな知見を創造する」学術機関である大学の特性が著しく損なわれかねない。「自主性、自律性」や「教育及び研究の特性」が認められている(教育基本法7条)大学は、高度の専門性を有する教員集団の自治によって運営されなければならない。学長は教員集団による大学の自治を担う代表である。この学長と同等の立場にたつ外部者の意見が強くなり、管理運営について政府の影響力が大きくなることによって、大学の自治が侵害されることを深く憂慮する。将来的に私立大学にも同様の組織の設置を求めてくることを危惧する意見もある。

 立命館大学教職員組合四役は、私立大学においても等しく大学の自治と学問の自由を遵守することを求める立場から、この法律案に断固として反対し、法改正の断念を強く求める。

 

 

以上

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ゆにおん_No.62 (四役アピール:国立大学の大学の自治と学問の自由を侵害する
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